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鮫肌の悲劇
じゃっじゃっ、じゃらっ、ちゃ~らららっ、ちゃらっ、
じゃっじゃっ、じゃらっ、ちゃ~らららっ、ちゃらっ、
ちゃららららららっ!
明るく、阿呆な歌を口ずさみながら、一人の酔った男が人気のない裏通りを彷徨っていた。
男の名は…って私が知るわけないだろう、私がっ!
私はこの気違いな男をあくまで間接的に観察しているに過ぎない。
話が脇道へそれてしまった。
男は、古典的な酔っ払い漫画によくある、電柱の下で胃の中の内容物を吐くと云う行為をやってのけた。かなり泥酔しているらしい。
これはちょっとやばいかも知れない。
しかし、彼の冷静な観察者である私には、彼に救いの手を差し伸べることなど許されないのだ。よって、私には何も出来ない。可哀想だが、私は陰ながら彼を応援することだけに力を尽くさせてもらおう。
男はひとしきりゲロゲロやったあと、また頼りなく歩みを進め始めた。すると向こうから、ひたひたと云うか、ぴちゃぴちゃと云うか、実に気味の悪い音が聞こえてきたのだ。道の向こう側には電灯がなく、そのまま果てしない闇へと続いていそうである。
男は、酔ったために良く見えない目を凝らし、道の向こう側を見詰めた。やがて、薄暗い電灯の下に、それは現れた。
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