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「おのれ、ここで何をしておる、神妙に致せ」
それは、ピンク色の、見た感じ使い古してぶよぶよになったスポンジのような…何と形容すれば良いのだろう。取り敢えずは生き物のようだ。しかし男の思考回路は、既に常識と云うものが酔いのために欠如しているらしく、それを見ても、別に逃げ出したりなどしなかった。
「おのれ、神妙に致せ。神妙に致さねば、おのれの着物を剥ぎ取るぞ」
「神妙?はぁん、何してぇのかは知らねえけどよぉ、誰が初対面のてめえのために神妙になんかしなくちゃなんねぇんだよぉ?」
「神妙に致せと申したはずだぞ。さもなくば、おのれの着物を剥ぎ取るぞ」
男も負けじと反論する。
「はんっ、剥げるもんなら服でも皮でも、何でも剥いでみな。云っとくが俺様はそんなに甘かねえぞぅ」
「…おのれ、今、剥げるもんなら服でも何でも剥いで見ろ、と云うたな」
「ああ云ったさ。それが何だってんだ?この化けもんが!」
「…そうか」
ピンク色のスポンジは、そのまま黙りこくってしまった。その間に、男はスポンジに対していろいろと暴言を吐いていたが、スポンジがあまりに無反応なので面白くなくなって、その場を去ろうとした。
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