丸い物体

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 その物体は、僕の握り拳とほぼ同じくらいの大きさだった。物体から少し離れて物体を見ていたときには気付かなかったが、物体は球体ではなく、球体を上から押し潰したような形をしている。物体の表面は、滑らかなようだ―――ようだ、と云うのは、僕には怖くて触る勇気がないから一応「ようだ」としているだけである。  話を戻そう。  物体は、見る限りでは滑らかそうな潰れた球体であり、少し光沢もあるようだ。そして何より特徴的なのは、鮮やかなオレンジ色である。物体の一番上には濃い緑色の、ギザギザの付いた光沢のない小さな円盤がちょこんと乗っていた。  僕はますます解らなくなった。この物体は何なのだろう。何のためにあるのだろう。どうやって使うのだろう―――いや、その前にこの物体には使用用途などあるのか?    僕はとうとう好奇心に負けて、この物体を触ってみることにした。僕の指を、恐る恐る物体に近づけていく。物体と、僕の指の間の距離がなくなっていくに従い、僕の指先に全神経が集中し、耳の中をドクドクと云う重たい音が駆け巡る。  あと、もう少し。ほんの、少し―――。  その時僕の体に云いようのない衝撃が走り、僕は思わず物体から逃げ出しそうになった。何だ、何なんだ!?耳の中のドクドクと云う音は速すぎて聞き取れないくらいに絶え間なく鳴り、息が酷く苦しい。     
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