丸い物体

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 何と云うことだ!何と云う巧妙なペテンなんだ!僕はただ異常に興奮し、僕と云う存在自体を忘れていた。指先に残るあの感触―――恐らく僕は一生忘れないだろう。滑らかだとばかり思っていた物体の表面は、実は見た目からは想像もつかないほど微妙にでこぼこしていたのだから―――!  僕があまりのショックから立ち直れないでいると、誰かが僕に声を掛けた。僕はこの星の言葉が解らないから、何と云っているのかさっぱり解らないが、僕に声を掛けたのは僕の友達のダリオラだってことくらいは解る。  ダリオラは、この星でたった一人の大切な僕の友達だ。でも、悲しいかな、僕にはダリオラの言葉が解らないので、僕は僕の星で大切な人を呼ぶときに使う、「ダリオラ」という言葉でダリオラを呼ぶことにしているのだ。  ダリオラは、物体を見つけるなり、いとも簡単に持ち上げた。そして、それを僕の目の前に差し出すと、にっこりと笑って何か云った。僕にはダリオラが何を云おうとしていたのかは解らなかったが、僕は何故か無意識のうちに首を縦に振ってしまっていた。僕はその時「しまった!」と直感的に思ったが、もう今更どうしようもない。     
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