丸い物体

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 ダリオラは満足そうに笑うと、物体をひっくり返して緑の円盤を下にした。そして物体の真ん中辺りに上から垂直に指を突き立て、そのまま外側に指を滑らせた。物体の、あの表面のオレンジ色のものは、内臓がもげるような奇妙な音を立てながら破れ(でも僕は内臓がもげる音なんて聞いたことがないけれど)、だらりとダリオラの手にぶら下がった。ダリオラは残ったものを手で二つに割ると、片方を僕にくれた。オレンジがかった、白い色をしていて、少し湿っている。僕はこれをずいぶん悩んだ挙句第二の物体と名付けることにし、ダリオラがこれをどうするか眺めていた。  すると驚いたことに、ダリオラはこの第二の物体を更に小さく割って、口に運んだ。その時僕はすべてを知ったような、実に不思議な気持ちになった。これは、このオレンジ色の物体は、何を隠そう食べ物だったんだ―――!  そうと解ると後は早かった。僕もダリオラがしていたのと同じように、物体を小さく割って、口に運びゆっくりと噛むと、物体の中から何やら汁が溢れ出した。舌の先が少ししぶれるようでいて、ほわんとした感じの、何とも云えない不思議な味だった。  ダリオラは目をぱちぱちさせて物体を味わっている僕に何か話し掛けた。僕にはダリオラの言葉は解らなかったが、たぶん、僕にこの物体をどう思ったか聞きたかったのだと思う。  そしてダリオラは、最後にもう一言僕に何か云って、僕が物体を見つけた部屋から出ていった。 「これはな、「みかん」って云う食べ物なんだよ」
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