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「しかしアケミちゃん、男が女に使う手が、君が使って効果があるものなのか?」
「でもマスター、彼女ノンケなのよ。あ、同じのおかわり」
ノンケとはごく一般的な、異性愛者のことを指す。この場合、彼女の好きな彼女は、男性が恋愛対象だと云うことである。
「それなら女心を直接くすぐってあげたほうが早いんじゃないですか?」
「例えば?」
氷だけのグラスをカラカラと揺らしながら、彼女はこちらに身を乗り出す。
「女性っておしゃれな雑貨屋さんとか、ムードのいい場所って好きでしょう。雑貨屋さん巡りとか、ロマンチックな場所で食事とかどうですか?」
「う~ん、そうねぇ…で、改まって『お付き合いしてください』と…」
「あとは…そうだ、さっきちょっと伺っていましたけど、メイクのお仕事をされてあるのなら、彼女にメイクしてあげるのはどうですか」
「おお、いいんじゃないか。『キレイだ』って云われるの、女は好きだろう。アケミちゃんがプロのテクを発揮してメイクして、彼女に『キレイだよ』って云ってやったらどうだ?」
「う~ん…確かに『キレイだ』って褒められるのは好きだけど」
「彼女もあなたの同業者の方なのですか?」
「いえ、違います。彼女は普通のOLさん――友人の紹介で、知り合ったの」
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