赤い林檎と白い姫

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私、知っていたの。 美しいあの薔薇には、棘があること。 私、知っていたの。 美しいあの人には、闇があること。 私、知っていたの。 美しいあの林檎には、毒があること。 それでも私は薔薇を手に取った。 それでも私はあの人に近づいた。 それでも、私は、林檎を食べた。 美しいあの人の毒で死ぬのなら、それも悪くないと思ったの。 だって、私、あの人のことを、愛していたのよ。 強くて、美しくて、可哀想な人。 …まさか、また目が覚めるなんて思っていなかったけれど。 でも私があの人が私を見続けてくれるのなら、それも悪くないわね。 だって死んでしまったら、きっと、もう私のことは見てくれないもの。 だから私はいつまでも綺麗でい続けなくちゃ。 美しいあの人よりも、もっと。 ねぇ、鏡さん、この世で一番、あの人を愛しているのはだあれ?
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