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私、神崎みゆは、目の前に座る後輩三条愁をこっそりと見ていた。
放課後の図書室に2人っきり。
まさに私にとっては夢のような状況だ。
『1度は体験してみたいよね!!』
友人達が前にそう言っていたのを覚えている。
実際、私も憧れていた。
『…いつか好きな人と2人っきりで』
『好きな人』
そう聞いて、思い浮かべるのは一つ下の後輩、愁のこと。
愁とは中学校の時から仲が良く、親愛的な意味で愁のことが好きだと思っていた。
でも、それは違っていた。
それに気づいたのは高2の冬のこと。
愁が同級生の女子と笑顔で話していた。
そのことは私の心をひどくざわつかせた。
何気ない日常風景のワンシーンのはずだったのに。
(何でこんなにモヤモヤするの)
よく分からない思いに駆り立てられて、どうすればいいか分からない。
ここから逃げ出してしまおうかーー。
そう思い、踵を返そうとした時だった。
愁が、私に気づいた。
会釈をされたぐらいだったのだが、その行動は私にとって大きな意味を持っていた。
私の空っぽだった心は、満たされていくようだった。
ストンと、何かが私の胸に落ちてきた。
あぁ、これは、『恋』だ。
私は愁のことを好きなんだ。
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