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西野が学校から出ると校門の前にリーゼントの男が立っていた。
「おい、お前か西野ってやつは」男は西野の目の前でつぶやいた。西野は目を合わせないようにして通り過ぎた。
「無視すんじゃねえよ!西野!」男は今度は大声で怒鳴った。
「なんだ、わかってんじゃねえか」西野は男のほうに振り向いて言った。
「まあ、確信があったわけじゃねえが」
「すいません、やっぱ違います」
「無理があるわ!ボケ」
「一体何なんだ。お前制服からして他校だろ。他校の奴とかかわったことなんかねえよ」
「よく言うぜ、この前思いっきりうちのボス殴ってたじゃねえか。下校時間だったからみんな見てたぞ。」
「おぼえてないぞ」西野は眉を寄せて言った。
「覚えてねえのはお前だけだ馬鹿」そう言うと男は西野のあごにパンチした。だが西野のあごは堅かったので無傷だった。むしろ男の拳骨のほうがダメージが大きくもう一方の手でかばっていた。
「やるなあ西野」男は下唇を噛んで言った。
「まだ何もしてないぞ。大体お前誰なんだ」
「太田圭吾だ」
「名前はいいよ。なんで俺に突っかかってくるんだ」西野は怪訝そうな顔をして言った。
「お前本当に覚えてないのか。怪訝そうな顔をしたいのは俺のほうだぜ。」太田はそう言った後も西野が黙っているのを確認して続けた。「いいか、お前はボスが放課後デートをしているときにボスの彼女のスカートをめくったんだ。それでボスとけんかになった。そんで悔しいがお前はボスをぼこぼこにしちまったんだ。」
「なんで俺は彼氏がいるときにスカートなんかめくっちまったんだ」
「知らねえよ」
「正気の沙汰じゃねえな」
「まったくだ」太田は大きくうなずいた。
「そんなにうなずくことねえじゃねえか!」西野は噛みついた。
西野の目の色が一瞬にして変わったので太田はたじろいだ。
「いや、僕はけっこうすごいことだと思うんだけどね」太田は苦笑いで言った。
「さあ、始めようか。」
「何をだい?」
「喧嘩だよ」西野は構えて言った。目は太田のあごをにらみつけていた。
「いいよ、もう。なんかもうよくなったよ。」太田はめいっぱい声を明るくしていった。
「もう手遅れさ。貴様は俺のあごを殴っちまった。」西野は口元をにやりとさせて言った。
「わかった。わかったよ。あご殴らせてやる。俺は三割の力で殴ったからお前も三割でやれよ。」
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