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昼食を食べるため会社に戻ると、食堂へと向かう廊下を歩く。外で食べるのか財布を片手にエレベーターを待つ女子社員や、同じように食堂へと向かう男性社員の姿を見かけた。
「あ、ラッキー。櫻木さん見かけちゃった」
「はー。やっぱり格好良いよね」
声を潜めて話しているつもりなんだろうが、女性の声は高めでよく耳に届いてくる。本人達はそれに気付いていないのだろうか。
自分への誉め言葉を気にすることなく歩いていると、突然背中に衝撃が走った。
「櫻木先輩!! 探してたんですよ? 一緒に昼メシ食べようと思って」
「……翔大、重い」
嬉しそうに満面の笑みを浮かべながら、翔大は俺の隣へと移動するとちらっと後ろを振り返った。
「先輩本当にモテますよね。あ!! いなかったのも、もしかしてまた告白ですか?」
「声デカイって」
翔大は同じ部署で働く二歳下の後輩だ。思ったことを素直に口に出す、よく言えば裏表のない奴だ。
「先輩なんでそんなモテるのに彼女いないんですか? あ、一人に絞らないとか?」
ただたまに考えてから話した方がいいと思うこともある。
「好きな人がいるんだよ」
「マジで!? どんな人ですか!? うわ、すごい気になる、櫻木先輩の好きな人。あ、じゃあ合コンなんて行かない……ですよね?」
「行かない」
「あー、受付の由実ちゃんに先輩連れてくるように言われてたのに」
「それ俺に言っていいのか?」
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