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「初めまして、浪崎栞です。よろしくお願いします」  緊張しているせいか、頬だけでなく耳まで赤くなっている浪崎栞は、自分に集まる視線から逃げるように少し俯いた。 「教育係は櫻木だ。いろいろと教えてやってくれ」 「はい」  挨拶も終わると皆それぞれ自分のデスクへと戻って行った。行き場に困っている浪崎に、近づくと名札を見せた。 「教育係になった櫻木怜です」 「え?」  浪崎は一瞬驚いたように顔を上げると、真っ直ぐ俺の顔を見てきた。  何だ……? 俺の顔に何かついてるのか? 「……何か質問でも?」 「あ、いえ、大丈夫です」  慌てて手を振ると浪崎は辺りをキョロキョロと見渡した。不思議に思いながらも、浪崎のデスクへと案内をした。 「ここが浪崎さんの席ね」 「はい」 「とりあえず今日は俺について、だいたいどんなことをしてるのか見ててくれればいいから」  そう言って腕時計を確認する。まだ少し時間があるな。 「今日は取引先を二件回ります。社内を案内しながら向かえばちょうどいいから行きましょう」
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