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「平井」
「……」
「平井!」
「えっ!? あ、何ですか?」
考えるのに夢中になっていたので反応が遅れ、慌てて藤沢先輩の方を見ると、先輩は私から目を逸らしてボソッと言った。
「平井って目、悪い?」
質問の意図がよくわからなかったが、とりあえず私はコクンと頷く。
「はい、すごく。裸眼だと、いつも座ってるこの距離でも、藤沢先輩の顔の輪郭がぼんやりとかろうじて見えるかなーどうかなーってくらいです」
「そんなに!?」
藤沢先輩らしくない声に、私は「しめた!」と思った。攻めどころはここだ。
「そうなんですよー。だから本も読めません。眼鏡かコンタクトなしじゃ、生きていけないんですよ、私」
「大袈裟な……」
「勝手がわかってる自宅なら何とかなりますが、それでも結構危険です。裸眼で歩き回るとあちこち打ち身だらけになるし」
「……それは不便だな」
よし、かなり傾いてきたぞ!
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