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ふむ、ミシンをもう一度使いたいとは思わないのでしょうか。
あるいは別のお仕事もしてみたいのでしょうか?
***
店内でお会いして、ひと月ほど経ったでしょうか。
ドアに付いたベルが来客を知らせました。
見ると佳香様が小さな小さな包みを手に立っていました。
私は顔中が緩んでいるのを感じながら微笑んで迎えました。
「いらっしゃいませ、佳香様」
佳香様は頭を下げながら、「こんにちわ」と小さな声で挨拶されます。
「あの。これ。プレゼントっ!」
手に持っていたのは、桃色の包装紙で包まれた、10センチ四方ほどの大きさで厚みはないものです。赤いリボンが掛けられていますが少し歪んでいます、お手製なのでしょう。
「ありがとうございます」
私の為に持ってきてくださったのならば、拒否する理由がありません。
私は素直に頂きました。
「開けてもよろしいですか?」
「えっ、あとにして!」
「え、そうですか」
私はその場で開けてもらって、受け取った方の笑顔を見るのが好きなので開けてもらう方がいいのですが。
「え、じゃ、じゃあ! 開けてもいいよ!」
「ありがとうございます」
許可を頂けたので、そっと包みを開けました。
中から出て来たのは、赤系の花柄の布地でできた、コースターです。
「これは……」
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