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 春斗君は一瞬目を丸くして、次いでクシャリと目を細めて笑った。そうして繋ぐ手に、力を篭めた。 「嫌だなんて思わない! むしろ、僕も結衣に負けないように頑張る!」 「春斗君!」  私達は顔を見合わせて、クシャリと笑った。 「ねぇ結衣、まずは受験勉強を頑張ろう? それで一緒の高校に行こう!」 「うん!」  ここでふと、絵里が脳裏を過ぎった。  想いがが通じて良かったが、さぁ次は勧誘だと、そう言わんばかりの絵里の笑み。  ……分かったよ、絵里。 「あー、あのね春斗君?」 「ん?」  この流れでは物凄く言い難いのだが、思い出してしまったからには恩ある絵里の為、無下にする訳にはいかなかった。 「絵里が、春斗君をバスケ部に欲しいみたいなの」  とりあえず、伝えるまでが私の任務。 「へー、そっか。だけど絵里には悪いけど、僕は部活動に所属するつもりはないよ。そもそも僕が球技あんまり得意じゃないの、結衣は知ってたよね」  春斗君は、どうやら全てをお見通し。絵里の思惑も、私のおざなりな勧誘も……。 「うん。絵里の手前黙ってたけど、実は知ってた」 「角が立たないように、適当に僕から断っておくよ。そもそも三年生の途中からの入部なんて、絵里も本気じゃないんじゃない?」 「うん。そうかもしれない」  実は私も、なんとなく、そんな気がしていたのだ。  私達は顔を見合わせて、もう一度笑った。 「よし、とにかく今は、受験に照準を合わせよう。それで一緒の制服着て、一緒の高校に通おう!」  残り一年弱と短い事を考慮して、春斗君は以前の中学校のブレザーをこれからも着用して過ごす事になっている。  だから高校は、同じ制服で通おうと、二人の思いは一層熱かった。 「うん春斗君!」  そうして春斗君の言葉に一も二もなく頷いた私だったけれど、数日後にこの安請け合いを早々に後悔する事になる。  春斗君の学力は県内一二の進学校にも余裕がある事を知り、私は尻に火が付いたように、連日猛勉強に励む事になった。  私と春斗君が同じ制服に身を包み、恋人同士として過ごすのは、もう少し先のお話――。
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