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「この謎は僕のクラスメイトの辻さんから聞いたものなんですが――」
◆
クラスメイトに辻美玖という女の子がいる。髪を肩で揃えた、ええと……ボブカットって言うんだったか。よくわからないから適度なショートヘアーということにさせてもらうけど、それくらいの髪で、顔立ちも小動物みたいな感じの子。部活はテニス部に入っていて、そんな幼く可愛らしい見た目でもクラスでは中心にいたりする。
辻さんが今朝登校すると机の中に一枚の手紙が入っていた。
僕も見せて貰ったけれど、その手紙には不思議な点が二つあった。その一つ目は手紙と一緒に便箋には大量の桜の花が同封されていたこと。
手紙を取り出そうとしたら途端に落ちてきた沢山の花びら。
僕と辻さんは割と早く登校するから、まだ教室には二人しかいなかったときに、その花びらが散らばってしまって、一緒に片づけをした。その際に辻さんは手紙を見せてくれた。
手紙の文面は、まあ、よく見るっていうか、いやラブレターとか見たことないんだけど、漫画とかドラマとかで見かけたことがある感じのことが書かれていて、内容はこのようなものだった。
辻さんが好きです。よければ付き合ってください。……ところでかつてのこの桜の思い出を覚えていますか? もしも覚えていて、そして僕のことが受け入れられるの であれば、返事は僕の机の中に入れてください。ダメでしたら返事はいりません。
二つ目は名前が記載されていなかったということ。
手紙には「返事は僕の机の中に」と書いてあるのに、これではどうしようもない。それどころか、誰からの手紙なのかすら判然としない。正直言って、手の打ちようがなかった。
「どうしよう……これじゃ返事もできない」
辻さんが悲し気に眼を伏せた。辻さんと僕は特別に仲が良いなんていうことは全くなかった。けれど、だからといって辻さんに手を貸さないというのもまた違う話だ。
「あの……よければ手伝おうか? その、手紙の人、探すの」
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