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ただいま、と言う声とともに玄関から入ってきたのは、見も知らない女であった。
「あの……どちらさんでしょう?」
この部屋(賃貸マンション・レジデンス茜台403号室)を伊藤博文という名前で借りている宇宙人、ルケルケ・7・トーはリビングに面したキッチンからエプロン姿で出てきた。右手には菜箸を持ち、昼ごはんの料理をしている真っ最中の図であった。
「どちらさんって、なにを言ってるんだ?」
女は首を傾げる。タメ口であった。まるでこの部屋に住んでいるかのようにリビングに上がり込み、勝手知ったるといった様子で隅のデスクの前に腰掛け、パソコンのスイッチを入れる。その所作はあまりにも堂々としており、ルケルケ・7・トーは目をパチクリする。
これはいったいどういう状況なのだろうか? もしかしたら地球人の未知の習慣なのかもしれないと、いろんな考えが頭のなかを巡った。
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