【 月夜の話 】

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六三郎の横顔を見ていた甚六は、やや声を張り、 「そうだ。これ聞いたら驚くぜ!」と言って、六三郎の顔を覗き込むような仕草をした。 「ん?…今度は何の話だ?」 これ以上 驚くことはないが、興味はある。 「それがよぉ………。びっくりするぜ!」 「どうかなぁ。」 「準備は いいか?」と、甚六は六三郎の胸を優しく叩いた。 六三郎は「わかった、わかった。」と頷きながら、面倒だが大袈裟に驚く準備をした。 「それがよぉ…。この城を建てる人が、自分は城に住まないで、城主になりたい人に住まわせてくれるらしいんだ。金はただで。」 「それで?……え、城主に!?」 六三郎は思わず大きな声になり、食い付くような勢いで甚六を見た。 甚六は したり顔でにやけるのを堪えて、話を続けた。 「おうよ。  城主になりゃ、城は勿論、富と、不老不死が手に入るという話だ。まぁ、不老不死ってのは 名を遺せるって意味だろうけどな。」 「………老いないってこたぁ、生きてないってことだ…って、思わねぇか?」 「?……あ…よく わかんねぇや。  寝坊けてると思えば、頭良さそうなこと言ってみたり、今日はどうしちまったんだ?」     
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