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「うん……。」と言いながら、六三郎は顎を擦った。少し考え込み、気になったことを甚六に訊ねた。
「なぁ…。その、城を建ててくれる人ってのは、どんな人だい?」
「ん?あん中に居るよ。
確か…あの、ちょいと歌舞いた着物の男だ。ほら、あれ。」
甚六は、城が建つ予定の場所で話し合っている連中を 袖の先で目立たないように示し、顎も動かしながら、六三郎に教えた。
―――――!
「甚六、急用を思い出した。
あ、それと!城主になろうなんて考えるなよ?いい事しか言わないで、気味の悪い話じゃねぇか。」
「おめぇ…さては、そんなこたぁ言っておいて、自分が城主になろうって腹じゃねぇだろうな?」
「話が良すぎる……裏があるんだ。」
「…確かにな。不老不死なんて、なぁ。
え…?まさか、信じてねぇよな?」
「嘘ならいいんだ。真なら、取り返しの付かないことになる。」
甚六は無言で、心配そうな顔で六三郎を見た。
「………で、急用って なんだ?」
「…野暮用さ。…すぐ終わる。
じゃ、行ってくるわ。
絶対 早まるなよ!」
「ああ、わかった。
わかったから、此処に用はねぇし。
野暮用に付き合っても、いいか?」
「え………ああ、家ん中だ。」
2人は素早く混雑を通り抜け、肩を並べて伸び伸びと歩いた。
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