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家の前に着くと、六三郎は深呼吸をして気持ちを落ち着けた。
戸を開けて、真っ先に、気にしていた物を見た。
先程、顎を擦っていた時に、
古城が消え、新たに城を建てようとしている。それに、城主にも成りたい者がなれるという話で、六三郎は「振り出しに戻ったんだ」と考えていた。
だから、姫の着物とこうべだけは風化しないままだったのだ…と。
―――――姫様は、つまらぬ遊びと言った。これで終い、とも。だが、あれでは、終いには ならなかったんだ。
六三郎が想像した、甦った姫の姿は…無かった。
六三郎の後ろから家の中に入った甚六は、外れそうな程の勢いと力加減で戸を閉めて、
震える声で「なっなっ…、何があった!?何をしたんだい!?」と、小声で言った。
「女物の着物じゃねぇか!そこに こうべ があるってこたぁ…おい……。」
「昨夜のことだ。
信じらんねぇと思うが、話してみるよ。」
「あ…ああ、わかった。」
甚六は、六三郎の傍に腰を下ろしたが、こうべが気になり、ちらりちらりと見て、「なぁ、落ち着かねぇや。見えねぇ所に置いてくんねぇか?」と頼んだ。
六三郎は頷いて、寒い時にかぶる 穣と傘を掛けて隠した。
2人は身を屈め、顔が付きそうな程の近さで、昨夜の出来事を話し、聞いた。
甚六は、とても驚きながらも、頭ごなしに否定することは無かった。
話が終わった後も、唸りながら考えている。
「うーむ…いやぁ、しかし……うーむ…。
その話が本当なら…だな、狐につままれたのは、俺達の方じゃねぇか。
証拠は そこにある。着物と…んんん、なぁ。
まぁ…本当なら、な。
いやぁ…。だったらよ?古城は何処に行ったんだ?…でも、証拠はそこに………ああ!駄目だ、駄目だぃ。」
甚六は左右に首を振り、寝転がった。
「………茶でも飲もう。」と言って、六三郎は立ち上がり、茶の支度を始めた。
茶をすすりながら、それからも 2人は長いこと話していたが、答えは出なかった。
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