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六三郎は、夕暮れの河原に来ていた。草の中に座る六三郎の頭上を、茜蜻蛉の群れが飛んで行く。
古城が消えてから然程の月日は過ぎてないが、建築作業は異様な速さで進み、見る間に 新たな城は建てられていった。
それから半月ほどで、城主が決まった…それは、六三郎と甚六も良く知る中年の男だった。
2人の胸には晴れないものが残ったが、人々や生き物たちが生活する町には、いつもと変わらない時間が流れていた。
―――――甚六が居てくれて良かった。あの日、話を聞いてもらえて、本当に良かった…有難てぇ。
あの妙な出来事を一人でも知ってる人がいるのは、心強い。
六三郎は、これから先も、たまに妙な出来事の話を甚六とするのだろうと思った。
「さぁてと…。」
六三郎は立ち上がり、茜色に染まった町の営みの中に紛れて行った。
【完】
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