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子供の頃から河原で遊び、泳ぎの上手い六三郎にとって、流れのない澄んだ池は、大きめの水風呂のようなものに思えた。
2分も経たないで、六三郎が顔を出した。
案内人は口元を綻ばせ、互いを見合った。
そして、池の底から持ち帰った物に視線を移した。
六三郎は、蛙の時とは大違いで、迷いの無い顔つきでいる。その腕に抱えている白い物は、月に照らされ、更に白く浮き立って見えた。
再び、謁見の間にて。
六三郎は無言で顔を伏せたまま、姫の言葉を待っていた。
「とうとう、見つけてくれたのじゃな。」
「…って こたぁ、これが…その、例の…」
「そうじゃ。お願いした物じゃ。
これが、妾の真の姿………。」
六三郎は思考が追いつかず、困惑した。
―――――目の前に姫君はいて、今、確かに会話している。これが真の姿ということは…まさか。
持ち帰った物が真白い〝こうべ〟だという所も、有り得ない想像をする要因である。
六三郎は、先程とは理由は違うが、またおかしな汗が出そうな思いにかられた。
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