Ⅰ章 With you again.

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 あいつは、小学生の頃からの友人だった。  引っ越してきた俺の家はあいつの、瑞貴の家のすぐ近くだった。  学年もクラスも家の方面も同じ。俺らは自然に仲良くなっていった。小学生なんてその日あった人とでも仲良くなれるほど自分の構える陣地が広い。瑞貴だって例外じゃなかった。  そのまま中学にあがって、俺らはもちろん同じ学校へ行った。俺は瑞貴と過ごす時間が気に入っていたようだった。  瑞貴はバスケ部に入って、俺は美術部に入った。  でも俺はそこで瑞貴に対し異変を感じた。元気がなかった? そうじゃない。だって瑞貴の部活がない日は一緒に学校へ行ったし、お昼だってお弁当は一緒に食べた。いつもと様子は何も変わらない。  けど、瑞貴は中学にあがって夏休みが終わったころくらいから急に何の前触れもなく、学校を欠席する日が増えていった。  そしてしばらくすると瑞貴は全く来なくなった。  心配だった。だって友人だから。だれよりも瑞貴と仲が良かった自信も、好かれている自信もあった。いつも何かあれば俺には瑞貴からすぐ連絡が来た。でも、今回はこない。 瑞貴はお姉さんの二人暮らしだと以前、本人に聞いた。あとで聞いた話だと母親は瑞貴がまだ小さい頃に。父親は海外にいるらしい。  俺は、瑞貴の家に何度も訪れた。その日学校で配布されたプリントとお菓子や瑞貴の好きな漫画を持って。でも、インターホンを押しても返ってくるのは沈黙だけ。誰かが出ることはなかった。  それどころか、最初はドアノブにかけておいた俺の持ってきたものは次の日かその次の日にはなくなっていたのに、ある日を境にぱったりとそれも止んだ。  瑞貴の携帯は電源が切られていて繋がらない。メールも返ってこない。  俺だけが取り残された気分だった。
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