Ⅰ章 With you again.

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 俺は部活をサボって急いで瑞貴の家に向かった。走って、走って、瑞貴の家がみえるところまで来た。そこには引っ越し用のトラックがとまっていた。  嫌な予感がした。いいや予感じゃない。誰もがあのトラックをみれば思うだろう。ここでトラックを行かせてしまったらもう一生、瑞貴に会えない気がした。  でも、そんな俺の必死な気持ちを全て裏切ってトラックは出発した。文化部の男子に既に距離のあるトラックに追いつくことなど不可能で、走り出したトラックは俺の瑞貴に会えるかもしれない、という期待を荷台に積んで去っていった。  大きく肩で息をしながら俺は道に座り込んだ。もう、瑞貴には一生会えないのかもしれない。果たしてもう一度出会える確率はどれだけなのか。今の俺にはそんなことも考える余裕も落ち着きも酸素の量も足りなかった。  しばらくして、俺は立ち上がり自分の家へ足を進めた。  あれから四年経って俺たちは高二になっていた。  今更なんであんな昔の話を思い出したかって……? だって、今俺の前には瑞貴がいる。  それはさかのぼること数時間前のこと。  今日は生まれて二度目の転校の日、当日。訳あって、今住んでいる家にはもう住めないので、一人暮らしをすることになった。  せっかくなら転校しようと思って、家の候補には今の学校には通うのが大変な距離の場所にした。まだ引っ越してはいないけど。  前の学校には中学からの友人が数人いた。みんないいやつだけど、やっぱり中学の友人は瑞貴を思い出させる。会えないのに思い出すのは精神的に少しつらかった。  俺は二年C組になった。漫画みたいなそんな大それた自己紹介はしなかったけれど、俺は一番後ろの窓側の席に新たに机を置かれ、俺の席はそこになった。 隣に人はいたが、今日は休みのようだった。
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