Ⅰ章 With you again.

5/9
前へ
/9ページ
次へ
 授業は思ったより以前通っていた学校と進度の差はなくて大丈夫そうだった。  授業やらホームルームやらが終わった後に俺の隣の席は誰なのか、担任の関原先生が教えてくれた。それは冗談にしてはあまりにも質が悪く、真実ならば今すぐソイツのもとへ行きたいほどに俺の心を左右させるものだった。  保健室にいるのではないか、と言うものだから俺は転入初日に誰も守りはしない校則を破って、保健室を探しながら走った。  息が切れるほど走って見つけた保健室はちょうど教室の真下だった。  中に入ると、保健室の先生が一人。 「瑞貴は!? 野々原瑞貴は、ここにいますか!?」  保健室の先生は俺の問いに目を見開いた。初めて見た生徒が保健室に急に入ってきて、挙句、人を探して叫びだす。  自分でも面白いほどに馬鹿なやつだと思った。 「の、野々原くん……? さっき寮に戻ったわ」  せっかく走って息まで切らせて、ここまで来たというのに無駄足だったらしい。これほどまでの息切れはあの頃の、中一のあのとき以来だろう。  寮というものの存在すらあまり詳しく知らなかった俺が寮の場所をわかるはずもなく、もう疲れたという足を無理に動かして荷物を持って学校を出た。  スマートフォンで寮の場所を調べ、文字通り必死に走った。  寮に着いても、寮生じゃない俺を寮長が入れてくれるはずもなく、俺はこれまた必死に寮長を説得した。その成果は報われ、寮長も付きで瑞貴の部屋に案内してくれることになった。
/9ページ

最初のコメントを投稿しよう!

9人が本棚に入れています
本棚に追加