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目が覚めたら病院だった。
白い天井に揺れるカーテン。
点滴の管が腕から伸びていた。
「日比君!」
橘の声だ。
身体を起こした僕に彼女が抱きついた。
シャンプーの香りと女の子の柔らかさに動揺する僕。
「えっ、ちょっ、橘!?」
驚きのあまり声が裏返った。
僕の耳元でしゃくり上げる橘。
ナースコールに飛んできた看護師さんに窘められるまで、彼女の抱擁は続いた。
どうやら僕は3日間眠っていたらしかった。
日付を見るとあの日から確かに3日が過ぎていた。
「本当にごめんなさい!」
勢いよく橘が頭を下げる。
慌てて僕は首を横に振った。
「大丈夫だから!ほら、怪我もかすり傷と打撲だけだし!」
あの高さから落ちてこの程度の怪我で済んだのは奇跡だと思う。
涙に濡れた彼女に色気を感じてしまい、僕は顔を直視出来なかった。
悟られまいとわざと明るく振舞っていると、何かが僕の腕に触れた。
生き物のように腕に絡みついたのは。
赤い糸だった。
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