見える

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( たちばな)ってさ、いつも何やってんだろうな」 クラスメイトの谷中( やなか)が首をかしげながら言った。 「あー、あの手?気になるよなぁ」 「不思議ちゃん、ってやつ?せっかく美人なのに勿体ないよな」 教室の隅の方で数名の男子生徒たちがひそひそと噂をする。 僕はそんな言葉を聞き流しながらちらりと窓際に目をやった。 くるくる、きゅ。 噂の本人、橘 雪乃( ゆきの)は真剣な顔で空中を見つめる。 そこから何かをつまみ、引っ張る仕草をすると今度はそれを結ぶように手を動かした。 ひとつ、もうひとつ。 忙しなく動く手は止まらない。 「橘、成績良かったっけ?」 「バカ、良いどころか学年一位だぞ」 「うっわまじか。頭の良い奴のする事なんて俺らにはわかんねえよ」 確かに、と笑い合う男子生徒たち。 くるくる、きゅ。くるくる。カシャン。 彼女の伸ばした腕が置いてあったペンに当たる。 机から転がったペンは僕の近くで止まった。 「どうぞ」 僕はペンを差し出す。 「ありがとう」 左手は空中をつまんだまま。 彼女は透き通るような瞳に僕を映す。 その目で、君は一体何を見ているのだろう?
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