2人が本棚に入れています
本棚に追加
ざあざあと降りしきる雨。
バケツをひっくり返したような、という表現がぴったりくる程の勢いだ。
あ、やっぱり。
傘、持ってきてよかった。
僕は窓の外を眺める。
「うわぁ、すごい雨……。さっきまであんなに晴れてたのに……」
「今日降水確率0パーセントでしょ!?天気予報の嘘つき~!」
帰りのSHR後の教室。
クラスメイト達は突然の雨に騒然としている。
それもそのはず、今日は今朝からずっといい天気だったのだ。
照りつける太陽はじりじりとアスファルトを焦がし、雨なんか降る気配は微塵も無い。
放課後を見計らったように降り出した雨に
生徒達は肩を落とす。
運動部はきっと室内での活動に変わるだろう。
「透~!傘無い!?折りたたみでいいから!!」
谷中が僕の前で手を合わせ、懇願する。
「あったかな……」
鞄の中を探る。折りたたみ傘、何処にやったっけ。
「頼む……!今日はどうしても早く帰らねーといけなくて」
大方、数学の補習から逃げ出す予定なんだろう。
「あ、あった」
鞄の中で皺の寄ったそれを手渡す。
「サンキュー!助かった!!にしても、今日普通の傘持って来た変人なんて、お前くらいだよな」
最後に余計な一言を付ける。傘、返してもらおうかな。
「別に、雨が降るような気がしただけ」
ふうん?とよく分かっていないような顔をする谷中。
と、教室の外から数学教師の声がする。
「やっべ!透、傘ありがとな!じゃあ!」
鞄を掴み、一瞬外を覗いたあと一目散に教室から飛び出す谷中。
「あれ、谷中はどこ行ったんだ?さてはあの野郎、逃げ出したな!」
先生は眉間をつまみ、皺を寄せる。
「俺も忙しいのに……!あ、日比。悪いんだけどこれ数学準備室に運んでおいてくれないか?」
ドサッと置かれたのは積み重なったテキスト数十冊。
先生は俺の返事なんか聞かず、まだ近くにいるであろう谷中を追いかけに行く。
飛んだとばっちりだ。傘なんか貸さなきゃ良かった。
最初のコメントを投稿しよう!