見える

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ざあざあと降りしきる雨。 バケツをひっくり返したような、という表現がぴったりくる程の勢いだ。 あ、やっぱり。 傘、持ってきてよかった。 僕は窓の外を眺める。 「うわぁ、すごい雨……。さっきまであんなに晴れてたのに……」 「今日降水確率0パーセントでしょ!?天気予報の嘘つき~!」 帰りのSHR後の教室。 クラスメイト達は突然の雨に騒然としている。 それもそのはず、今日は今朝からずっといい天気だったのだ。 照りつける太陽はじりじりとアスファルトを焦がし、雨なんか降る気配は微塵も無い。 放課後を見計らったように降り出した雨に 生徒達は肩を落とす。 運動部はきっと室内での活動に変わるだろう。 「(とおる)~!傘無い!?折りたたみでいいから!!」 谷中が僕の前で手を合わせ、懇願する。 「あったかな……」 鞄の中を探る。折りたたみ傘、何処にやったっけ。 「頼む……!今日はどうしても早く帰らねーといけなくて」 大方、数学の補習から逃げ出す予定なんだろう。 「あ、あった」 鞄の中で皺の寄ったそれを手渡す。 「サンキュー!助かった!!にしても、今日普通の傘持って来た変人なんて、お前くらいだよな」 最後に余計な一言を付ける。傘、返してもらおうかな。 「別に、雨が降るような気がしただけ」 ふうん?とよく分かっていないような顔をする谷中。 と、教室の外から数学教師の声がする。 「やっべ!透、傘ありがとな!じゃあ!」 鞄を掴み、一瞬外を覗いたあと一目散に教室から飛び出す谷中。 「あれ、谷中はどこ行ったんだ?さてはあの野郎、逃げ出したな!」 先生は眉間をつまみ、皺を寄せる。 「俺も忙しいのに……!あ、日比(ひび)。悪いんだけどこれ数学準備室に運んでおいてくれないか?」 ドサッと置かれたのは積み重なったテキスト数十冊。 先生は俺の返事なんか聞かず、まだ近くにいるであろう谷中を追いかけに行く。 飛んだとばっちりだ。傘なんか貸さなきゃ良かった。
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