見える

7/17
前へ
/17ページ
次へ
ずきずきと頭が痛む。 だけど、そんなことに構っている暇はない。 橘が居るのはどこだ? 映像で見えたのは薄暗い階段。 錆びた手摺りと塗装の剥がれかかった壁。 2階のパソコン室の近く? いや違う、あそこは割りと人通りが多い。 図書室の隣か? ここも違う。窓が多いから天気は悪くても多少は明るいはずだ。 3階、理科室も違う。音楽室付近は吹奏楽部が活動中だし、社会科準備室前は蛍光灯を変えたばかりで1箇所だけ色が違う。 階段のある場所をピックアップしながら必死に考える。 人通りが無くて、暗い場所。 もう一度さっきの映像を反芻させる。 違う、ここも違う。 早く探し出さないと……! ほとんどパニックで、上手く頭が回らない。落ち着きたいのに、落ち着いてなんかいられない。 思い出せ、とこめかみ辺りを押さえた。 さっきの映像に窓は? あったはず。けど光が入ってこない場所。 壁の掲示物は? 色褪せたポスターが数枚。たぶん結構前のもの。 ということは、普段人が立ち入らない場所だろうか。 不鮮明な記憶と、映像のピースを繋ぎ合わせた。 もしかして、旧校舎? ハッとひとつの答えに辿り着く。 なんでそんな所に?あそこは2ヵ月後に建て壊される予定で、生徒は立入禁止のはずだ。 どくんどくんと心臓が脈打つ。 冷や汗が頬を伝って気分が悪い。 ここから旧校舎まで10分。そんなんじゃ間に合わない。 だけど全力で走れば、もしかしたら。 そこに橘がいるという確証すら無いけど、考えるより先に身体が動く。 頼む、どうか。 どうか彼女を助けられますように。
/17ページ

最初のコメントを投稿しよう!

2人が本棚に入れています
本棚に追加