見える

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ぜえぜえと息が切れる。 階段を飛ばしながら全速力で旧校舎へ走る。 渡り廊下は雨が池を作っていた。 濡れることも厭わず、僕は生ぬるい風を切っていく。 靴に水が染みる不快さも、喉から血の味がすることすらも気にならない。 僕の頭にあるのは橘のことだけだった。 窓と同様に錆び付いたドアをこじ開ける。 新校舎の影になった旧校舎は肌寒い。 本当にここに居るのだろうか。 押し寄せる不安を振り払って階段を駆け上がる。 映像で見えた場所には見覚えがあった。 まずい、あと1分。 一瞬見えた映像の時計が指していた時間。 5時まであとほんの僅かしかない。 棒になる脚に鞭打った。 頬がじんじんと熱を持つ。 乱れた呼吸のまま、廊下を走る。 急げ、速く……! 切羽詰まった心情に、もう手脚なんか止まってしまいそうだった。 曲がった先に、彼女がいた。
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