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サヨナラをあなたへ
3月10日。
雲一つない晴天の下、暖かな風と共に校庭には桜の花びらが舞う。
今日は私、山岸美沙の高校生活最後となる卒業式の日。
3年A組の窓際後方2番目にある自分の机から見る景色もこれで見納めかと思うと少しもの悲しい。
教卓で担任の先生がこれから大学生活や就職して社会に出ていく教え子達に最後となる挨拶を終える。
必死で涙をこらえる男子、どこか寂しそうに教室を見つめる女子。
全37名のクラスメイト達がそれぞれ違う顔で席を立ち、学級委員長の嗚咽交じりの号令で一斉に頭を下げる。
「ありがとうございました!」
私は特に涙を流すことなく極めて快活に最後の挨拶を発声した。
泣き顔ではなく笑顔で。それが3年間という長い間お世話になったこの学校への、先生方という恩師への、クラスメイトというかけがえのない友達への最大限の礼儀であると思ったからだ。
「大学に行っても連絡してね」
「絶対にまた会おうね」
教卓の前で泣きじゃくる女子生徒2人がいた。
私の親友、いつも明るく周りを元気づけてくれたアキちゃんと大人っぽく頼りになるカノちゃんだ。
2人はしばらく互いに抱きしめあって泣き合うと、こちらの席へと近づいてきた。
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