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彼にしっかりと伝えなくてはいけない言葉があるのだから。
「神様。あなたから頂いたサービス、使わせて頂きます」
意を決し、そう口にした私の体が一瞬だけ白く光る。恐らく神の力が作用したのだろう。
彼に伝えたい言葉。そんなものは考えだしたらキリがない程ある。
それでも言わなければならないことはやはりこの一言だろう。
私はそっと植草の耳元でこう呟いた。
「ねぇ植草。私の事は出来るだけ早く忘れてね」
その言葉を聞いた彼が驚いた表情でこちらを見る。
だけど私の姿は見えてはいないだろう。
神のサービスを使ったからか、少しずつ自分の体の透明度が増していく。
これで私の人生は終わり。
神から許されたのはたった一言。もう何を言っても植草には届かない。
「……忘れないで……私の事……!」
何を言っても相手には聞こえないという安心感からだろう、私はつい油断して言ってはならない気持ちを吐き出してしまっていた。
「忘れねぇよ。山岸の事は絶対」
「……え?」
「忘れないからな! 絶対!」
誰もいない教室で植草はそう叫んだ。彼には自分の2つ目の言葉が聞こえていたのだろうか。
「植草!」
そんなことはもうどうでもいい。
私は何も触る事の出来ない半透明な体でただ植草太一を抱きしめていた。
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