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「愛してる山岸。ずっと……ずっと!」
「大好きよ植草。ずっと……ずっと……」
夕暮れに照らされながら私の体が少しずつ消滅していく。
完全に消えるまで両の腕は彼の体を抱きしめ続けていた。
次に目を開いた時、私は何もない真っ白な空間に浮かんでいた。
〝やぁやぁ山岸美沙さん。約束通りお迎えにあがりましたよ〟
姿は見えないが、聞き覚えのある声が空間に響く。
「……神様?」
〝いかにも。そのとおりです〟
「一つだけ聞いてもいい?」
〝はて、何でしょう?〟
「私の『忘れないで』って言葉……あれは彼に聞こえてたの?」
〝さぁ……どうでしょうね〟
自称神様は腹が立つくらい軽い口調でとぼけてみせた。
〝最初に説明した通り、サービスが適用されるのはその人が笑顔で別れを告げられる言葉だけですから〟
「……そっか。でもどうしてわざわざこんなサービスを」
〝そんなの決まっているでしょう〟
こちらの問いかけに、神は自信満々でこう答えた。
私はサービス精神旺盛な神ですから、と。
<了>
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