2.気になる人

2/8
568人が本棚に入れています
本棚に追加
/415ページ
最近、私には気になる人がいる。 「退屈だなぁ。」 「こら。お客様いるのに変なことぼやかない。」 ベシッ。 マスター…注文表で叩かないで。 地味に痛いんだから。 そんな私達のやりとりを常連客は微笑ましく見ている。 「仕事中だろ?どうせならもっと別のことぼやきたまえ。」 「え、怒るとこそこ?」 ぼやくのはOKなんかい。 仕事中だから怒られたのかと思ったけれど。 「お嬢!注文いいかー?」 「はいよー。あとお嬢って呼ばないで。」 純喫茶 カノン。 純喫茶にしては結構大きなお店であり、常連客も割といる。というか、新規のお客なんて少ない。 そして私のバイト先でもある。 「お嬢ー、こっちも注文いいかな?」 「だからその呼び方やめてって。」 その中で私は常連客からお嬢と呼ばれてしまっている。 もちろん自分からそう呼べと言ったわけじゃない。 すべての元凶は………。 「まぁ諦めなって。そして慣れろ。もう二年も呼ばれてるだろ。」 こいつなのだ。 カノンのマスター、荒谷士郎。 年齢より若く見られることもあるがバリバリの50歳。 おっさんだ。そして独身だ。 マスターが私のことを小さい時からお嬢呼ばわりするから、常連客も真似してしまったのだ。 「いい加減マスターもお嬢呼ばわりやめて。」 恥ずかしいったらしょうがない。 目立ちたくないのに。 「お前は夏音の娘だからお嬢さんだろ?オレがこう呼ぶのは当然だ。敬意も込めてな。」 貶してるとしか思えないんですけど。 そのニタニタ顔見せつけられて。
/415ページ

最初のコメントを投稿しよう!