4.彼女

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「天音は大学生だよね?ゼミ入ってるってことは。」 「あ、一応ね。経済学部です。」 文系っぽいもんなぁ。 あ、じゃあ店でパソコンとか持ち込んでたのって、レポートとかゼミの資料作りとかかな。 謎が溶けてすっきり。 「そろそろ帰ろ。風邪引くよ。」 「そうだね。ちょっと肌寒いかな。」 それは大変だ。 天音が風邪なんて引いたら。 私は天音の手を取って指を絡める。 恋人繋ぎってやつ。 「ち、千景ちゃん?」 おーまた赤くなった。 初々しくて可愛いなぁ。 「嫌?」 分かりきっていることを聞いてみる。 「そんなわけないよ…。」 反応してくれるところもいいね。 「私、お付き合いするの初めてだから至らない所もあると思うけど…。」 「いいよ。ゆっくり私達のペースでね。」 「千景ちゃん、本当に高校生?」 「だからそうだってば。」 そんなに疑う? バリバリの高校生なのに。 「だって余裕あるんだもん。」 「………ないよ。余裕なんて。」 「嘘だぁ。」 本当です。 今も抱き締めたい衝動に駆られて大変なんだから。 ゆっくり少しずつって決めたんだ。 また段階をすっ飛ばしてたまるか。 「千景ちゃん、暖かいね!」 笑顔の彼女。 私はこの笑顔をずっと見ていきたいと思った。 生まれて初めて大事にしたいって思える人なんだ、ゆっくり少しずつ…彼女と進んでいこう。 私の初めてできた彼女と。
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