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「はぁ、はぁ……」  息が苦しい。目が霞む。自分がどこに向かっているかも解らずに、私は彷徨っている。  見慣れた町の風景は、一瞬にして消え去ってしまった。何が起こったのかさえ解らない____いや、思い出したくなかった。  喉がイガイガして、ひどく乾いている。咳き込むと、呼吸困難に陥ったように息が吸えなくなり、私は蹲った。  瓦礫の上に手を付く。鉄板のように熱い。慌てて手を離すと、手の平が赤く腫れあがっていた。  砂埃が立ち込め、所々では煙が上がっている。誰か人のいる気配はなかった。崩壊した建物の残骸が、辺りに広がっていた。  頭がくらくらする。茹であがるような暑さのせいだろうか? と、額に手を当てた。ぬるりと嫌な感触がした。指先に鮮血が付いていた。いつの間に。深手を負った覚えもない。感覚が麻痺しているのかもしれなかった。血を見たら急に体が震えてきた。そのままそこに倒れそうになるも、グッとを足の裏に力を入れて踏ん張った。  体に力を入れたら、忘れていた痛みを思い出した。ワイシャツの袖が破け、二の腕には細かい切り傷が、制服のスカートの裾から覗く膝小僧は両膝とも擦りむき、血が黒く固まっていた。
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