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次の日の朝。
ドアノブを捻る。回転は途中で止まり扉は開かない。
「どうして、誰も気づかないんだ!?」
男は扉の前で吠えた。これは、もう訴訟ものだ。怒りに任せ壁を蹴ってみるも、壁と一体化しているように見える扉はびくともしない。椅子でも叩きつけてやろうかと思ったが、よく考えたら椅子は磁力式で滑らかにスライドするが持ち上げられないので諦めた。安全対策を講じた結果の設計だ。
仕事が始まる時刻になると、壁に穴が開き、そこから紙でできた古い蔵書が飛び出してくる。
「それで、仕事だけはさせようというのか?」
(馬鹿馬鹿しい!私は仕事を選べない立場ではない。正当な対価と正当な扱いを受けてこそ職務を全うできるのだ。何も言わずに仕事だけしろといわれてもごめんだ。)
「…しかし、他にやることが無いなあ。」
タダで仕事はしない、と思った反面、勝手に職場の施設を使って怠けるのは気がひける。
「…………。」
しょうがなく本を手に取り、修復箇所がないか確認し始めた。
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