マンパワーコーポレーション

週末

「ねえパパ。今日は何食べるの？」
「タイガはね、お子様ランチがいいなー。」
　疲れ知らずの子どもたちは、遊園地ではしゃぎまわった後だというのに元気がいい。高倉は軽い疲れを感じていたし、リサは子どもに連れまわされてすでにへとへとなようだった。
「そうだなぁ。今日はママがたくさん頑張ってくれたから『ロゼ』に行こうか。」
高倉がデパートの上階にあるフレンチレストランの名を口にすると、リサの目がパッと輝いた。子連れでも行けるカジュアルな店だが、味がよく窓からの眺めも素晴らしい。
「やった！」
リサは花が開いたような笑みをこぼして、高倉の腕に抱き着く。美しい妻と2人の息子に囲まれ、生活には何不自由ない。高倉は幸せをかみしめた。
　デパートのエレベーターに乗り込み、これから食べる料理について話す息子たちの声を聞いていると、3階でドアが開き、大きなおなかを抱えた妊婦と青木が乗ってきた。
「青木さん。」
「おや、高倉君。買い物かい？」
「いえ、今日はみんなで遊園地に。今から『ロゼ』で食事するんです。レオ、タイガ、ご挨拶しなさい。」
　2人の少年が不揃いなリズムで挨拶をすると、青木の隣にいた妊婦――青木の妻、カヨが目を細めて微笑んだ。
「今日は出産の準備に来たんだ。うちは女の子だから、凝ったデザインのベッドや、かわいい産着が欲しくてね。本当はもう少し早く来たかったんだけど、ちょっと前までカヨの具合が良くなかったから、予定日まで1週間もなくなった今日になってようやくさ。」
青木は一気に話す。どちらかというと普段は寡黙なタイプの青木が、ことのほか饒舌になっているのは、おそらく出産が近いせいだろう。
　エレベーターが目的の階に止り、落ち着いたトーンのメロディを流す。高倉は青木に会釈をすると、リサたちを連れてレストランへ向かった。