0人が本棚に入れています
本棚に追加
今日は七夕というのにあいにくの雨。
空からは「涙雨」という言葉のように、ぽつぽつ、しとしとと雨が降り注ぐ。
全国的に雨が酷くて、満足に星の見えるところのほうが少ないくらいだ。
僕はいつぞや空へ帰っていった星屑のことを思い出す。
星屑の居場所なんて、そう多くは無いのだろうけれど、天の川の砂子にでも今はなっているのだろうか。――ふと浮かんだ疑問に、僕は口元を緩める。
金、銀、砂子。
砂と言っても星の砂に違いない。小さな燐の灯が灯る、そんな星屑の砂。
と、耳元で聞き覚えのある声がした。
――おやおや少年、私のことを考えていてくれたのかね。
星屑が帚星と一緒にやってきて、そう笑ってみせる。
雨の中で佇む星たちは、そぼ濡れても淡く発光しているようで、ほんのり目に眩しかった。
――いや、天の川という場所について物思いに耽っていたんだがね。
なんだか悔しくてそう返すと、星屑はケタケタと笑った。
――天の川は私たちのテリトリだからね、それに天の川の水は月の涙で出来ているのだよ。
そう、帚星が自慢げに説明する。
月の涙の水があの星々を美しく洗い上げているのだと、彼らはこぞって自慢した。
――それなら、夜に降る雨は、月の涙なのかい。
尋ねてみれば帚星はいかにもと頷いて、けろりとしている。
だから雨夜の翌日は、たいてい星が綺麗に瞬くのだという。
――織姫と彦星も、明日に延期しているさ、きっとね。
そう言われたら、何となくそんな気がしてしまった。
――翌日の澄んだ星空を思いながら、僕は眠りにつくのだった。
最初のコメントを投稿しよう!