酔生夢死

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「知ることはできる、だが知らない。僕が誰かはお前が知る必要はない」 「知ることができるなら、知って、それを僕に教えて頂けないでしょうか。お願いします」 「どうして?」 「ここがどこだかは分からなくても、せめて自分がどうして死んだのかさえ分かれば僕はここで正しく死んで居られると思うんです。その意味を確かめられさえすれば。でも、それが分からないとおちおち死んでも居られないというような気分になる。それは、この世界にとっても良くないことなんじゃないですか?」 「それは脅しかい? 随分と自信家なんだな。自分の存在が、世界にとって何かしらの、それどころか決定的な意味を持っていると信じていなければ出ない言葉だ。嫌いじゃないぜ、そういうの。でも僕はお前の死に様になんか興味はないから、自分で確かめておいで」  地球はもう粉々に砕け散っていた。クマムシなんかはその破片に乗ってどこか別の星まで辿り着いてそこでまた生態系を築くのかも知れないし、そもそも広い宇宙には地球外生命体なんていくらでも居るのかも知れない。だから地球が砕け散った程度のことは何も問題とはならないのかも知れない。いや、それを言えばそもそも宇宙が滅んだって問題はないだろう。
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