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酔生夢死
俺が死んだのには意味がある。その筈だ。だって、他ならぬ俺が死んだのだから。そうでなくてはいけない。
「ここは天国ですか?」
目を覚ました俺は自分が死んでいることだけが分かった。死んでいることが分かる、とはどういう状態なのかをまだ生きている人間に説明することは難しい。何故と言って、あなたがもしも死んだことがないのなら、あなたの身体はこの知覚を想像することができないのだから。とりあえず、目の前に居た五歳くらいの少年に俺は敬語で訊いた。だって、運が悪ければこいつが神様かも知れない。
「ここは天国でもなければ地獄でもない。勉強も労働も、当然する必要はない。肉体がないからね。したけりゃすりゃいいが、何を強いられることもない。"ヒマ"にさえ耐えられるなら、ここは天国かも知れない。逆に、それに耐えられない奴にとってはまさに地獄なんだろうね」
そいつは振り返りもせず、淡々と言った。声音は、やはり俺が「五歳の少年」という字面からイメージするものと全く狂いがない。もうそんなに無邪気に甲高い訳でもなく、それなりに世間を知り始めた声だ。
「あなたは誰ですか? 僕が何故死んだのか知っていますか?」
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