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人助け
反対側へ渡ろうと車が途切れるのを待っていたら、対岸を物凄い勢いで走っている人がいた。
どこかに遅刻でもしそうなのだろうか。
ぼんやりとそんなことを考えていたら、その人が目の前を通りすぎたタイミンクで車の行き来がなくなったので、俺は向う側へと渡った。
渡り切ったところで、ふいに何かが足にぶつかった。
辺りを見回すが何もない。
確かに何かが足に当たったけれど、周辺には何もないし足が痛むということもない。
気のせいだと思い歩き出したら、ふいに背中へ声がかけられた。
「ありがとう! おかげで逃げられた!」
振り返ると、数十メールと離れた位置にさっき目の前を走り抜けた人が立っていた。俺に向かって礼を言い、手を振って、今度は歩いて去って行く。
俺、何かしたのかな。もしかして、今しがた足に何か当たった感触がしたのと関係があるのかな。
もう一度注意深く辺りを見回すが何もない。ただ周辺を窺った一瞬だけ、地面から風が吹き上げた気がした。
俺には判らないけれど何かいたのかな、さっきの人はそれに追いかけられていたのかな。
ただ道を渡っただけだけれど、俺は知らぬ間に人助けをしたのかもしれない。
人助け…完
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