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小豆から仕込む古式のお赤飯はとても時間がかかるので、おこわを食紅でピンクに着色して金時の甘納豆をまぶすという技を編み出したのだ。
昭和30年代から普及しだし、いまでは北海道のお赤飯といえばそのスタイルなのだという。
うーん、なるほど。
それはさぞかし子どもがよろこぶだろう。
「晃くんのすきな給食メニューはなんだったの?」
伊緒さんからの質問にしばしうーん、と唸って記憶をたぐり寄せる。
「あ!そういえば"カムカム"が好きでしたねえ」
「カムカム……??なんだべか」
おお、これも伊緒さんの学校にはなかったのですね。
カムカムとは別名を"かみかみ給食"ともいい、その名のとおりよく噛んで食べるメニューで、子どもたちの歯の健康を守ろうという主旨のものだった。
ぼくの学校では、ソフト大豆とイカげその二種類があった。
いま思い返してもシブいメニューだけど、ぼくは歯が丈夫なためかこのカムカムが大好きだった。
そのおかげかどうかは分からないけれど、大人になったいまも虫歯は一本もない。
「給食ひとつでも、こんなにお土地柄が出るのねえ」
フルーツ牛乳をくぴくぴと飲み干して、伊緒さんがしきりに感心している。
まったく、おっしゃるとおりだ。
これも食文化史の1ページを彩る話題となるだろう。
「でもいま思うと、給食ってほんとに子どものこと色々考えてつくってくれてたのね。食べてるときは、ヘンテコな組み合わせだなあって思ったりもしたけど、ちゃあんと意味があったんだわ」
うんうん、そうですよね。
たまたまお風呂上がりの牛乳から始まった話題だったけど、大事なテーマに発展しました。
もしこれから子どもが生まれて、学校に通うようになったら、やっぱり給食についての話をするのだろう。
でも、甘納豆のお赤飯とカムカムは、ぜひ家庭でも導入してほしいものだと思っている。
子どもに便乗して、ぼくもよろこんで食べさせてもらうのだろうなあ。
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