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お梶さんは場が静まるのを待って、ごく控えめにコメントしました。
「お塩、かと存じまする」
ほほう!
「なにゆえかように?」
意表をついた答えに家臣団はもとより、家康さんも身を乗り出します。
「どんなにすばらしい食べ物も、お塩の味がせねば旨うございませぬ」
場内がどよめき、家康さんは満足げに何度もうなずきます。
なるほどなるほど。
機知に富んだ、おみごとな回答です。
「されば、いちばんまずいものは?」
興がのった家康さんは、重ねて問いかけます。
「それもまた、お塩かと」
塩分が強すぎると素材の味を損ない、また塩だけを食べてもおいしくない、というのがその理由です。
なるほどなあ。
こんな聡明なコメントからお梶さんは、戦国の世で男として生まれていたら、一軍の将となったに違いないと評判になったそうです。
二つ目は、わたしの大好きな「一休さん」のお話です。
将軍さまはいつものように悪気なく、一休さんに「この世でいちばんおいしいものが食べたい!」と言い出します。
一休さんは困るふうでもなく、ではご馳走しますゆえ、いついつにお寺にいらっしゃいと答えます。
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