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はてさて、どんな料理を食べさせてくれるのやらと、将軍さまはわくわくしながらお寺の門を叩きました。
しかし、ご馳走の前の作法などと称して、一休さんはなぜか次々と家事労働を申し付けます。
雑巾がけ、薪割り、洗濯、その他諸々……いかに武家の棟梁とて貴族化した将軍さまには重労働です。
やんなきゃいいのに、というのは甘茶でカッポレというものでしょう。
有無をいわさぬ引力というか魔力のようなものが一休さんには備わっていて、将軍さまといえどもそこから逃れることはできないのです。
日頃の不摂生とストレスでぼろぼろの将軍さまでしたが、それでもフラフラになりながら作業を完了しました。
もうらめぇ、とへたりこんだその時、
「お勤めまことにかたじけなく。それでは湯殿をつかわれよ」
まるで仏の啓示のように一休さんがお風呂をすすめます。
たくさん身体を動かして、久しぶりに汗もいっぱいかいて、ほどよい加減のお湯に浸った将軍さまは、身も心もとろとろに溶け出すような心地よさです。
そしてお風呂上がりでさっぱりしたころにはほとんどのカロリーを消費してしまい、胃袋がきゅんっと縮まるような飢餓感に襲われたのです。
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