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河川敷はかつてと変わらず、人でごった返していた。
花火までまだ間があるので、伊緒さんと夜店を冷やかしてまわる。
川原石の足下は少し不安定で、彼女が転んだりしないように自然と手をつないで歩いた。
なるほど、こうなるのか。
ちょっといい雰囲気ではないか。
金魚すくいとか綿あめとか、射的とかたこ焼きとか、全国どこでも見られる定番以外に、伊緒さんにとっては珍しい屋台があったようだ。
ひとつ、鮎の塩焼き。
ひとつ、冷しキュウリ。
あまり知られていないけど、鮎は伊緒さんの故郷の北海道でも捕れる川魚だ。
でも夜店の屋台で見るのは初めてだという。
冷しキュウリはもう、氷でしめた一本漬けを串にしただけのシンプルこの上ないものだけど、これも伊緒さんは珍しがった。
せっかくなので一本ずつ買って、食べながらぶらぶらする。
淡白できめの細かい鮎の身は、伊緒さんのお口に合ったみたいだ。
けっこう塩気がきいているので、その後の冷しキュウリがことのほかおいしいと喜んでくれる。
そう言えば屋台の食べ物って串が多いような気がする。
調理しやすくて売りやすくて食べやすいからか。
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