ここぞとばかりの「カップ麺」。これまた妙においしかったり

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 それはもう、ものすごい雨の日でした。  関西にある、かつて夫が育ったお家に引っ越してきた初日のことです。  荷物を解くのはまあ、おっぽらかしておいて、さっそく近くのスーパーに初買い出しに行くべかと思っていた矢先でした。  一天にわかにかき曇り、逆巻く風がすぐ裏手の山に当たって、不気味な唸り声をあげたのです。  あれよと言う間に空は臨界点を迎え、わたしは生まれて初めて「黒雲」が湧き上がる様子を目にしました。  カッ、と青紫のフラッシュを焚いたように雲の内部が輝き、次の瞬間「ゴガン」と特大の雷鳴が炸裂したのです。  かみなりさまが何より怖いわたしはぴゅーっ、とばかりにお家の中に逃げ帰り、耳をふさいで夫にぴったりくっつきました。  こうすればおへそも隠せるので安心です。  鳴る神の  少しとよみて さし曇り  雨も降らぬか  君を留めむ  万葉集にのっている柿本人麻呂の歌を思い出します。  "雷がゴロゴロ鳴って、曇ってきた。  雨が降ってくれたなら、あなたをこの部屋に引き留められるのに"  そんな女の子目線、乙女力全開のこの歌が、わたしは大好きです。
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