143人が本棚に入れています
本棚に追加
/111ページ
ぼくは伊緒さんのお話を聞いているうちにおかしくなってしまって、辛抱たまらずとうとう笑いだしてしまった。
ぷんすかー!と伊緒さんはおこっているけど、これはもう無理もないことだ。
彼女が遭遇したのは関西に特有の、「地蔵盆」という行事だろう。
8月の月遅れ盆のあと、だいたい24日にすることが多い。
さっきのお話のとおり、お地蔵さんの祠を賑やかに飾って、お供え物のお菓子をこどもたちに配るのが特徴的な内容となる。
仏事としてはまあ、いろいろと由来も意味もあるのだけど、こどもたちにとってはお菓子をたくさんもらえる夏休みの楽しみなイベントのひとつだった。
まさかとは思うけど、小柄な伊緒さんがこどもに間違えられてお菓子をもらったと考えたら、微笑ましくて仕方ない。
それでつい、笑いが止まらなくなってしまったのだ。
こどもを守護するイメージの強いお地蔵さまの法要は、やっぱりこどものためのお祭りだ。
古くから地蔵信仰が盛んだった近畿地方では馴染み深いけれど、一部を除いて他の地域ではまったく知られていないことも多い。
でもぼくはこどもの頃に、駄菓子をよく食べたという記憶がない。
最初のコメントを投稿しよう!