143人が本棚に入れています
本棚に追加
/111ページ
それというのもいわゆる「駄菓子屋さん」なるものが近くにはなくって、そんなお店がある学区の子たちをうらやましく思ったものだった。
年配の方なら10円とか20円、ぼくと近い世代なら100円玉を握りしめて、駄菓子屋さんに通ったという話をよく耳にする。
お店全体がもうおもちゃ箱みたいなもので、ところせましと安くてちいさなお菓子が並んだ様子は、さぞや楽しかったろうと想像する。
だからぼくにとっては、地蔵盆のときがそんな駄菓子を口にできる貴重なチャンスだったのだ。
伊緒さんはというと、駄菓子屋さんは近くにあったものの、お家の方針であまり食べさせてもらえなかったそうだ。
いいなあいいなあと横目で見ながら、とうとう今の今まで口にしたことはないという。
むう!では、今日が記念すべき初体験ではないか!
「おじいちゃんおばあちゃん、ありがとう。お地蔵さま、ありがとう」
なむなむ、と手を合わせて、伊緒さんがもらってきた袋の中身をテーブルにあけてみる。
途端に、こどもの頃の思い出があふれるようなノスタルジーを感じてしまう。
「すごいすごい!なにこれ!」
最初のコメントを投稿しよう!