なんか駄菓子をたくさんもらったぞ!「地蔵盆」?なにそれ、ねえ

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 召し上がってみたらいかがですか、というすすめに伊緒さんは素直にしたがい、おそるおそるといった感じで封を切った。  端からまふまふまふ、とかじって、もぐもぐもぐと咀嚼する。  ぼくはなぜか、かたずを飲んでそれを見守る。 「お味はどうですか?」 「うまい」  伊緒さんがネコのように目を細めている。  お気に召したようだ。  ほかにも気になった順にちょっとずつつまみ食いして、その度に伊緒さんは「うまいうまい」と大喜びしていた。 「うーん、どれもおいしい!ひとつひとつを大きく見えるようにするか、歯ごたえのあるようにつくって満足感を出してるのね。この工夫は、すっごく勉強になるわ」  おお、さすがお料理上手の伊緒さん。着眼点がちがいます。  でも思い返すと、伊緒さんがつくってくれる料理にもたしかに通じるところがある。  安い鶏むね肉を開いて大きなチキンカツにしてくれたり、少ないお肉をサイコロステーキにしてこんにゃくやさつまいもでかさ増ししてくれたり。  味だけじゃなく「満足感」への工夫にも心を砕いてくれているではないか。  こどもたちを喜ばせるという目的において、駄菓子はまさしく、そんな心遣いの結晶といえるかもしれない。  いまは夏だから入ってませんでしたけど、めちゃくちゃ長いのとかコインの形したのとか、チョコ系の駄菓子も楽しいですよ。  そう言うと、 「へえぇぇ!へえぇぇ!」  と、伊緒さんは目をキラキラさせて興味津々のご様子だ。 「ねえ!もちろん毎日はだめだけど、こどもができたら食べさせてあげようね!」  ぽろっ、と出た自身の言葉に、伊緒さんはすぐさま顔を赤らめた。  はわはわはわ、と阿呆のようにぼくが恥じらう。  そのせいもあって余計に恥ずかしくなったのだろう。  照れ隠しも兼ねて伊緒さんが、"すごくすっぱいガム"をぼくの口に押し込んだ。
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