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ふと見ると、伊緒さんも同じような目をしてふるふるとぼくを見つめている。
一瞬のうちに事情を了解したぼくは、とりあえず伊緒さんに濡れた服を着替えるように言い含め、二階にある自分の部屋へと駆け上がった。
そうかそうか、お母さんとはぐれてしまったんだな。
ネコさんのお引越しでは、親が子を一匹ずつくわえて移動させるので、しばしば迷子が発生する。
目が開いて、自力で動き回れるようになるとじっとしていないので、なおのことだろう。
きっとこの子もそうだ。巣を移動して2日経つということは、危ないところだったのではないか。
「伊緒さん、これを」
ぼくは息せききって部屋からひっつかんできた袋の中身を、彼女の前に広げた。
ネコ用缶詰、ゼリータイプのネコのご飯、スープ状のネコのおやつ、小さめのネコ用ドライフード、等々。
どちゃどちゃっと出てきたネコ用食べ物の数々に、髪を拭いていた伊緒さんが目を丸くした。
あわせて茶トラの子ニャーも「にーにー」と鳴いた。
深入りするまい、とは思っていたのだけど、気が付くとぼくはネコのご飯を買い込んでしまっていた。
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